米運輸省の高速道路交通安全局(NHTSA)は現地時間の28日、米国で発生した自動車による交通事故の損失額が年間で8710億米ドルに上るとの試算を発表した。米国民1人当たりにすると900米ドルの負担になるとしている。

今回の試算は2010年のデータに基づいており、8710億米ドルという数値は同年の国内総生産(GDP)の1.9%に相当するとした。経済的な損失は2770億米ドルにとどまったが、事故による人命の喪失や負傷による生活の質の低下といった社会的な損失は5940億米ドルに達した。2010年の自動車事故の死亡者数は3万2999人で、負傷者は約390万人、損傷を受けた車両は約2390万台だった。

■酒気帯びとスピード違反、よそ見が主原因

事故の原因別では、酒気帯びとスピード違反、よそ見運転が原因となる場合が多い。酒気帯び運転が原因の事故件数は全体の18%を占めており、経済的損失額は490億米ドル、社会的損失額は1990億米ドルに上った。米国民1人当たり負担額は158米ドル。これらの事故を起こしたドライバーの90%以上が血中アルコール濃度(BAC)で0.08ポイント以上の状態だったとされる。

スピード違反が原因の事故件数は全体の21%を占める。経済的損失額は590億米ドル、社会的損失額は2100億米ドルとなった。1人当たり負担額は191米ドルとなっており、酒気帯びやよそ見運転よりも損失額が大きかった。

よそ見運転による事故件数は全体の17%を占めており、経済的損失額は460億米ドル、社会的損失額は1290億米ドルだった。1人当たり負担額は148米ドルとなる。

事故全体のうち歩行者や自転車ユーザーとの事故による経済的損失額は190億米ドル、社会的損失額は900億米ドルだった。

■シートベルトに絶大な効果

自動車の乗員がシートベルトを着用していた場合の効果は大きく、医療費の支出額や生産性の低下など690億米ドル相当の損失の発生を防いだとした。逆に実際には着用していなかったが、もし乗員がシートベルトを着用していれば防ぐことのできた経済的損失は140億米ドル、社会的損失は720億米ドルに上るとした。

NHTSAの声明によると、今回の試算の損失額には生産性の低下や医療・リハビリテーション支出、渋滞の発生、法廷関連の費用、救急サービス費用、保険金の支払い手続き関連費用、雇用者の負担などが含まれる。これらの損失額のうち75%は税金や保険、渋滞による交通の遅延、燃費の悪化、環境への負荷増大などの形で社会が負担することになったとしている。

2014/5/30

 

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