フォルクスワーゲン(VW)は4日、ロシアの首都モスクワの南150キロメートルにあるカルーガで建設したエンジン工場を開所したと発表した。投資額は約2億5000万ユーロ(約332億円)で、生産能力は年間15万基。新開発の1600cc「EA211」ガソリンエンジンを製造し、カルーガの組立工場で製造するVW「ポロ」とシュコダ「ラピード」のほか、VW「ジェッタ」やシュコダの「オクタビア」「イエティ」に搭載する。外資の自動車メーカーが単独でロシアにエンジ工場を設立したのはVWが初めて。ロシアの新車市場は低迷を続けているが、VWは長期的な成長の可能性を見据え、市場での地位固めを狙う。

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新エンジン工場の面積は3万2000平方メートルで、1日当たり600基を生産可能。稼動初期の生産をスムーズに行うため、新エンジン工場の従業員400人の約60%が、すでにシュコダのチェコ北部ムラダー・ボレスラフの本社工場と、独ケムニッツとザルツギッターのエンジン工場、ポーランドのポルコビツェのエンジン工場で訓練を受けたという。

■ロシア市場の潜在力に期待

ロシアの新車市場は年間10%以上の成長を続けてきたが、2013年、14年と2年連続で前年実績を下回った。在モスクワの欧州ビジネス協会(AEB)によれば、今年1~7月の累計販売は前年同期比35.3%減の91万3181台となっており、15年通年では前年比36%減の155万台にとどまる見通し。VWの1~7月のロシア販売は44.3%減の4万2525台で、ブランド別7位となっている。

VWの乗用車部品部門を統括するシュマール取締役は、ロシアの自動車産業の潜在力を信じていると指摘。エンジン生産を開始することにより、部品調達率を引き上げるとともに、より購入しやすい価格で製品を消費者に提供することが可能になると述べている。同取締役はまた、現在の新車市場の状況にかかわらず、「(ロシア国内の)パートナーシップの継続と強化が必要だ」と強調している。

■コストの国内比率拡大で関税を優遇

ロイター通信によれば、ロシア政府は、外資系の自動車メーカーに対し、20年までに生産コストの60%以上を国内で費やすことを求めており、見返りに部品の輸入関税の引き下げを提供している。VWは12年、エンジン工場を建設すると発表。16年までにロシアで生産する車の30%以上に搭載する計画を示していた。

フォード・モーターとロシアの自動車大手ソラーズ(Sollers)との合弁会社、フォード・ソラーズも3日、2億7500万米ドルを投じてロシア西部タタルスタン共和国に建設した新エンジン工場を開所した。生産能力は年間10万5000基で、最大で20万基まで拡大可能。

2015/9/7

 

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