三菱レイヨンは14日、欧州の炭素繊維・複合材料事業の拡大を図るため、SMC(Sheet Molding Compound)中間基材の生産工場を独バイエルン州に新設すると発表した。グループ会社のWethje Carbon Composites(WCC)の工場敷地内に新設備を導入し、2016年9月に稼働開始する予定だ。


欧州の自動車市場では、燃費規制の強化を背景とした車体軽量化が活発になっており、高い強度と軽さを両立する炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を、高級車だけでなく量販車にも本格的に採用する動きが加速している。三菱レイヨンはこうしたなか、自動車用途に適した炭素繊維である高性能ラージトウや、意匠性に優れる外板部品を短時間でプレス成形可能な中間基材である速硬化性プリプレグを開発し、製品化してきた。

同社の欧州の事業展開では、ドイツのWCCとTKインダストリーズの買収を通じ、CFRP製自動車部品や中間基材の量産拠点を整備するとともに、CFマーケティング・アンド・テクニカルセンターを設置し、現地のマーケティング担当者を増員することにより、自動車用途の炭素繊維・複合材料のニーズを探ってきた。

今回のSMC生産工場の新設は、高級車向けのハイエンドソリューションに加えて、量販車を対象とする低コストで技術的にも利用しやすいソリューションへのニーズに対応するものという。

■プリプレグ中間基材より短時間で成形

SMCは、繊維強化プラスチック(FRP)の中間基材の一種で、長さ数センチメートルの繊維を樹脂中に分散させたシート状の材料をプレス成形により部材に加工する工法。炭素繊維の織物に樹脂を含浸させたプリプレグ中間基材と比べて、複雑な形状の部材を短時間で成形することができる。また、金属と同様に機械特性が均質であるため、従来の部品設計ノウハウを生かしながら、比較的容易に炭素繊維を利用して、軽量化と高強度化を実現できるという。

同社はこれまで、高性能ラージトウやハイサイクルプレス成形(PCM工法)用プリプレグ材料の開発・製品化を進めてきた。SMC中間基材をラインアップに加えることで、大手自動車メーカーをはじめとするユーザーへの提案力を強化し、欧州の炭素繊維・複合材料事業の拡大を目指す。

2015/10/15

 

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